ストレス解消型デバイス「Gaming Big Enter Key」の提案

この記事は FUN Advent Calendar 2023 の17日目の記事になります。

(コロナにかかり、大遅刻しました。スイマセン....)

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昨日(16日)は nagata さんによる、逆張りオタクが独学で音ゲー中級者になった話(かも) でした!

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↑思想強くて笑いました

 

 

※注意 この記事には、事実でない内容や筆者の偏見が多く含まれております。ご注意ください。

 

 

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1.背景

1.1ストレス

 日本社会においてストレスは大きな社会問題となっている.企業ではストレスチェックが義務化されるなど,ストレスの管理が重要となっている.そして,ストレスには様々な解消方法があり,ランニングをする,歌を歌う,風呂に入るなど,人それぞれの方法によりストレスを解消している.しかし,これらのストレス解消法は準備を必要としたり,ある程度まとまった時間がなければ行えないものが多い.そこで本研究では,日々の生活の中に存在する,短時間で行えるストレス解消法に着目する.それは「エンターキーの押下」である.

 「エンターキーの押下」は多くの社会人が行うPC操作の中に含まれる動作であり,たとえ業務中であっても,少し強くエンターキーを叩くだけで気持ちよくなり,ストレス解消に繋がる.(ただし,この動作により生まれる騒音は,周囲の人間のストレスとなる.そのため,「エンターキーの押下」はストレスの押し付けとも言える.これは明らかに公衆の衛生を害する行為であるため,「エンターキーの押下」をストレス解消法として捉えるべきか否かは議論をしていく必要がある.)

 「エンターキーの押下」によるストレス解消量は,押下行為の気持ちよさに比例する.押下行為の気持ちよさを生む要因としては,「物理的なボタン」「面積の広いキースイッチ」「適度なストローク」が考えられる.例えば,タッチパネル上のエンターキーを強く押しても,気持ちよさには繋がらない.それどころか,突き指の危険性が生まれる.反対に,メカニカルキーボードのエンターキーでは,押下による気持ちよさが生まれる.これらから言えることは,「エンターキーは大きければ大きいほどストレス解消につながる」ということである.

 

 

1.2ゲーム

 ここ数年,「esports」という言葉を耳にする機会が大きく増えている.実際に,多額の賞金がかけられたゲーム大会が存在したり,ゲームをプレイする様子を配信するストリーマーというジャンルが生まれ,配信者・視聴者共に増加傾向にあったりするなど,esportsが日本中に広まっている.そして,esportsにおける主要なゲームジャンルとして,FPS対戦格闘ゲームなどが存在する.これらのゲームを満足に楽しむためには,(ゲームにもよるが)ミドルスペック以上のゲーム向きPCが必要になってしまうことが多々ある.従来,ミドルスペック以上のPCや,グラフィックボードを搭載したPCは,多少コアな人向けであったと思われる.しかし今は,小中学生ですらゲーム用PCを欲しがっているということも珍しくない.

これらの需要を満たすPCは「ゲーミングPC」と呼ばれる.ゲーミングPCの特徴として,

  • グラフィック性能が高い
  • ゲーマー向けのソフトウェアがプリインストールされていることもある(steamクライアント,ゲーム本体など)
  • 無駄に光る

などが挙げられる.

 また,PC以外でも,「ゲーミングマウス」「ゲーミングキーボード」などのデバイスが存在する.これらには,反応速度が速い,ゲーム向けの機能が搭載している,などの特徴がある.また,ゲーミングPCと同じように「無駄に光る」製品も多く存在する.

 そして,これらのデバイスから派生した「ゲーミング○○」という製品も多く存在する.ゲーミングチェア,ゲーミングベッド,ゲーミングウェア,といった製品が存在し,間接的にゲームに関連する商品も増加している.そして,これらの製品の一部にも「無駄に光る」という機能が搭載されていることが少なくない.それどころか,「無駄に光る」という特徴を持ち,ゲームには一切関係ないデバイスまで「ゲーミング○○」と名前がつく場合も存在する.つまり「ゲーミング○○」とは,ゲームに関係なく,「無駄に光る」デバイスのことを指しているとも言える.

 ここで,なぜ「無駄に光る」製品が存在するのかを考えてみる.あくまで推測ではあるが,その理由は「なんかカッコいいから」ではないかと考える.光るものに憧れた結果,約1680万色(正確には16777216色)に光るデバイスに惹かれたのではないだろうか.

 これらを踏まえ,1.1項で挙げた「大きなエンターキー」に加えて,ゲーミング要素(無駄に光る)を加えた物が存在すれば,ストレス解消かつ「なんかカッコいい」デバイスが作れると考える.そこで本論文では,ストレス解消型デバイス「Gaming Big Enter Key」を提案する(図1). 

 

図1 Gaming Big Enter Key の使用イメージ

 


2.先行研究

 大きなエンターキーに関しては,すでに商品化が行われており,容易に入手することが可能である.(ショッピングサイトで「エンターキー クッション」と検索した様子を図2に示す.)本研究では,大きなエンターキーに加え,さらに謎に光らせることにより,さらなる機能性向上を目指している.

図2 ショッピングサイトでビッグエンターキーを購入できる様子

 ゲーミング○○に関しても,ゲームに関係あるデバイスや,ゲームに関係のないデバイスがすでに商品化されている.エンターキーに関しても,キーボードの中のキーとして見ると,謎に光る商品は存在する.しかし,それは通常サイズのものである.本研究では大きなエンターキーを謎に光らせる事により,新たな可能性を見出すことができると考える. 

 


3.提案

 本論文では,ストレス解消型デバイス「Gaming Big Enter Key」を提案する.このデバイスを使用することで,日々のストレスが軽減される上に,謎に光る機能により「なんかかっこいい」という感情を引き出し,気分を向上させることが期待できる.また,エンターキーの押下に対するフィードバックにも着目する.従来のビッグエンターキーでは,押下に対するフィードバックはPC画面上にしか表示されない.そこで,押下に対応してLEDの点灯パターンを変化させることにより,フィードバックを増加させ,さらなる操作感・ストレス解消量を目指す.

 本デバイスは,エンターキーとして使用することが前提となるため,マイコンを用いてUSBキーボードとして認識されるよう制御を行う.また,LEDの点灯パターンの制御も同様にマイコンを用いる.

 

 

4.実装

 本研究のデバイスは,主に「ケース部」「LED部」「制御部」の3部分に分かれる.

 「ケース部」はエンターキーの外装や,各種パーツの固定用の土台,戻りバネなどが含まれる.「LED部」は「謎に光る」機能を実現するためのLEDを指す.「制御部」は,入出力の制御を行うマイコン,各種端子,電子回路などが含まれる.

 「ケース部」の制作には主に段ボールと3Dプリンタを用いた.エンターキーの外装の素材や作成方法はいくつか考えられる.例えば,3Dプリンターで作成する,スタイロフォームを削り作成する,アクリルを組み合わせて作成する,など様々な方法があるが,今回はSDGsに考慮し使用済み段ボールを使用することとした.(なお,様々な加工を施すことは,古紙回収に出しにくくなる行為であり,SDGsに反しているという点は無視する.)詳細は後述するが,「Enter」という文字が書かれる箇所は,光を通過させるために,乳白色のアクリルを使用している.使用済み段ボールを使用して外装を組み立てている様子を図3に示す.

図3 段ボールを組み立てている様子


 しかし,段ボールを使うだけでは,表面がチープな見た目になってしまう.そこで黒色のカッティングシールを表面に貼り,全体の質感を落ち着いた色にしている.また,「enter」という文字の部分は,カッティングプロッターを使用して切り抜いている.カッティングシートを貼り付けた様子を図4に示す.

 

図4 カッティングシートを張り付けた様子


 エンターキーのストロークを生み出す部分は,3Dプリンターで出力したパーツと押しバネを使用している(図5).このパーツによりストロークは10mmで固定される.

 

図5 ストロークを生み出すためのパーツ


 「LED部」にはテープLEDを用いる.LEDにより光らせる箇所は,エンターキー外周下部の隙間と「Enter」という文字の部分の2箇所である.これらのテープLEDは土台部分に固定して配置する.その様子を図6に示す.

 

図6 外周下部のLEDを配置した様子

 「制御部」で使用しているマイコンは,USB機能搭載のPIC18F14K50とした.実際の制作には,パスコン,USB端子,ICSP端子,リセッタブルヒューズなどが搭載済みの,秋月電子通商の「PIC18F14K50使用USB対応超小型マイコンボード」を使用している.キー押下の取得にはフォトリフレクタを使用している.これらのパーツはブレッドボード上に実装し,エンターキー内部に収めている.テープLEDは制御の都合上二系統とし,それぞれ別のピンから制御を行う.テープLEDへの電源供給は,ACアダプターを用いて供給する.マイコンボードに搭載されているリセッタブルヒューズは350mAまで,LEDテープの消費電流は6mA x (53+8)=366mAと,十分な供給が不可能であるため,外部電源を使用した.プログラムは,Microchip Libraries for Applications のUSBキーボードサンプルを使用している.

 これらの実装をすべて完了した状態の内部画像を図7に示す.

 

図7 デバイス内部をすべて実装した様子

 


5.使用イメージ

 本研究のデバイスの動作模様と,使用イメージの動画を以下に示す.

 

 本デバイスは,電源を投入すると同時に白色に点灯する.その後,キーが押下されている間,赤青緑とそれを混ぜ合わせた計7色の中から,ルーレットのように高速で変化し,キーを離すことで色が確定する.また,キーの押下に合わせて,USBキーボードとしても動作するため,PCのエンターキ―としても使用することが可能である.

 

 

6.応用例

 本デバイスを用いた応用例を2つ提示する.

 一つ目は,企業が福利厚生として本デバイスを支給することである.前述したとおり,企業では従業員のストレスの管理が重要となる.しかし,人それぞれの解消法ができるようにサポートするのは労力がかかる.そこで本デバイスを利用することで,業務時間をストレス解消につなげることができる.ストレス解消だけでなく,業務効率の向上,最終的には企業の利益向上にもつながる可能性もある.

 二つ目は,エンターキ―の押下がうるさい人のエンターキ―を本デバイスにすり替えることである.エンターキ―の押下がうるさく,周囲に迷惑をかけている人は,自身のキーの押下のうるささに気付いていないことが多い.本デバイスは内部にバネを4つ搭載し,静音などの処理を一切していないため,押下音が通常のキーボードに比べて遥かに大きい.そこで,本人に気付かれないように本デバイスとすり替えることで,「うわっ…私の押下音大きすぎ…?」と自覚することが期待できる.

 

 

7.まとめ

 本研究では,ストレス解消型デバイス「Gaming Big Enter Key」の提案を行った.実際にデバイスを作成し,その使用感を確かめることや,このデバイスを用いた応用例を2つ提示した.今後は,押下音の低下,発色パターンの増加,より良いフィードバックの提案を検討している.

 

 

謝辞

 本研究の遂行にあたり,工房職員のN様には加工方法の選定から実際の作業の補助まで,大変お世話になりました.本当に感謝いたします.

 また,まつさん(Twitter:@MatsuHibr)より,LEDテープの提供をしていただきました.本当に感謝いたします.

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明日(18日)は mkod さんによる「mkod ToDO & MAKING」です!

お楽しみに!

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